【台湾の医療制度崩壊は近い!?】進まない台湾の国民健康保険の改革
みなさんこんにちは、applemint 代表の佐藤 (@slamdunk772) です。
今日は台湾の国民健康保険『健保』についてお話をします。
台湾では国民の99%が『全民健康保險』通称『健保』と呼ばれる国民健康保険に加入しています🏥
台湾では医療へのアクセスがとても便利で、国民健康保険の制度が充実していないアメリカから来たアメリカ人の友人は口を揃えて台湾の医療制度を称賛しています😎
僕もこの前肩が痛くなったので、家の近くにある馬偕という大病院に行ったら、診察 + レントゲン + MRI検査 + 薬で、たった1500元 (6000円ぐらい) ほどだったのを覚えています😵
日本の方は「なーんだ、そんなもんか」と思うと思いますが、アメリカで同じ事をしたら多分保険に加入していてても、2000 – 3000ドル (25-35万円ぐらい) したと思います。
そんな医療天国の台湾ですが、どうも財務と帳尻が合っておらず将来的にかなり危ない事がわかっています。
今日のブログでは今後危ないと言われている台湾の国民医療保険制度や、高齢化社会の歪み、逼迫する台湾の財務などについてお話をしたいと思います👍
台湾の医療制度は崩壊する!?
中国語で「台湾の医療制度崩壊」(台灣 醫療 崩潰) みたいに検索をすると、関連記事がわんさか出てきます。
まずはその背景からお話をしたいと思います。
高齢化社会の問題
台湾の出生率低下は深刻で、2021年の出生率は1.07でなんと世界ワースト1位でした。(2位は韓国の1.09、3位はシンガポールの1.15)。2026年には台湾の人口の20%が65歳以上という高齢化社会に突入すると言われています。
台湾は既に高齢化が割と進んでいるのですが、その現状を見てみたいという方は、是非どこかの大病院にいってみてください。病院は高齢者で溢れています。
あ、でも日本も同じ感じですかね(苦笑)
さて、この高齢化社会と台湾の医療制度は何がどう関係しているのでしょうか?
台湾では65歳以上は被扶養者としての資格を得るため、なんと2026年以降は台湾人の5人に1人がそもそも健康保険を払わなくていいのです😱しかも高齢者の医療ニーズは若い人の4-6倍と言われています。
保障範囲の調整
台湾の国民健康保険制度が財政的に危ない事は度々指摘されてますが、政府は2010年以降医療費の圧縮と保障範囲の縮小ができていません。なぜか?その理由は「高齢化社会」と「政治」だと僕は思っています。
前章でも触れましたが、2026年以降、台湾の人口の20%以上は65歳以上になると言われています。それに加えて台湾の出生率はどんどん低下しており、2060年には高齢者の人口は全体の40%になると言われています。
みんな健康保険の費用を引き上げるか、適用範囲を縮小しないといけないのはわかってます。でもしない、というかできないのは「政治」が絡んでると思います。
民主国家の台湾では4年に1度、国のリーダー(總統) を決める選挙が行われます。この選挙の投票率が異様なほど高いんですね。
2020年に行われた總統選舉では投票率は74.9%、その前の2016年は66.27%、そしてその前の2012年では74.38%といずれも非常に高い投票率です。また、以下は2020年總統選舉の年齢別投票率です。
60歳以上で投票された方は525万人以上いて、これは台湾の総人口 2357万人の内 22%です。ちなみに、wikipedia で2020年時点の60歳以上の人口を調べたら約525万人いて、上の投票者数と比べるとなんと60歳以上の方のほぼ100%が投票に行っていることになります😂
数字は恐らくどこか間違っていますが、いずれにせよ高齢者の投票率は高い事は間違いなさそうです。
この真意はさておき、わかっていることは以下です:
- 台湾では高齢化社会は間違いなく来る
- 高齢者の投票率は高い
これが何を意味するかわかりますよね?今後政治家は高齢者が好む施策を行うということです。では、国民健康保険の適用範囲縮小は高齢者にとっていいことでしょうか?
頭のいいみなさんは答えがわかっていると思います😎
医療福祉への支出
次に、台湾の政府の支出から医療や福祉への支出を見ていきましょう。まずは2021年の秋に提出された2022年度の国家予算案を見ていきたいと思います。
まずわかるのが、歳出が歳入を上回っている事です。次に一番下の #5. 社会福祉の支出を見てください。歳出の26.6%を占め、前年度から7.7ポイント上がってます。
興味深いことに、社会福祉の支出は毎年決まって全体の 25-26% ということです。この数字を見てわかることは今後社会福祉の支出は恐らく減らないということです。また、歳出がどんどん増えています。
歳出を補うための政府の主な源は稅課收入で、この稅課收入の主な収入源は営業税です。
営業税は消費税でもあります。現在は5%ですが、これが上がる可能性はあります。ただし、投票率が高い台湾で営業税を6%にすると民衆の反感をくらい選挙に負ける可能性が高くなります。
税収を上げるなら法人税や選挙に関係ない外資から課税をもっとする気がします。
今後起こり得る事
話を医療に戻して最後締めます。台湾では2030年に医者不足が起きると言われています。戦後ベビーブームの最後の世代が2030年にリタイアするからです。
つまり高まる医療への需要に対して供給が下がるという需要と供給のミスマッチは起こるでしょう。
ここでは仮に高齢者の方を「既存顧客」として僕が政治家で経営的な視点で話を進めます。
既存顧客に対して価格の値上げやサービスの適用範囲の縮小が難しいのは経営者の僕が一番わかっています。ではどうするか?僕が経営者なら、医療サービスの範囲を広げ、保険の適用範囲を小さく見せるかなーと思っています。
例えば僕が今まで1万円の費用に対して100の医療を適用範囲としていたら、そもそものサービス範囲を150に広げ、「1万円で100のサービスは提供できるけど、残りの50のサービスを受けたければ追加費用がかかるよ」ってするかなーって思います😬
ちなみにこの残りの50は最新医療で、今まで治療が難しかった病気などを治せる医療です。
既存顧客はこの医療を受けるため国民健康保険 + 民間の保険に加入します。政府は民間の保険会社から最新医療に対する税制を設けるか法人税を引き上げて、崩壊する財務を補填するかなーって思います。
以上!台湾から逼迫する台湾の医療でした!