台湾で経営するなら「人が辞める前提」で考えた方がいい

先日2年ぶりぐらいに知り合いの飲食店を訪ねた。

この飲食店を知ったきっかけは、オーナーさんからのお問合せだと記憶している。確か10年ぐらい前の話だ。

なので、このお店は入れ替わりが激しい台北でもう10年以上頑張っている。

このお店のオーナーは日本で育った台湾人の方で、もちろん日本語は問題ない。中国語も問題ない。

彼の所作を見ていると、台湾人っていうより、日本人って気がする。

この日も僕が早めの時間を予約して来店すると、出迎えてくれた。もういくつになったかわからないが、今もきちんとお店に出て接客をしている。

このオーナーさんは自分で料理は出来ない。そのため、レストランを経営するにあたり、常にシェフを探す必要がある。もしかしたらこういうケースは珍しいのかもしれない(!?)。

よく聞くのは、料理が出来るシェフが自分のお店を持ちたいと思ってレストランを立ち上げ、そのままオーナーになるケースだ。

正直どっちが正解かはわからないが、このオーナーさんを見ていると、オーナーが接客してお客さんと直にコミュニケーションを取る事は、なんだかものすごく最適解に思える。

逆に、接客をホールスタッフに任せてキッチンにこもってしまうオーナー兼シェフは、僕は個人的にあまり共感するタイプの経営ではない。

というのも、僕はレストランシェフがオーナーになって、接客にほとんど関与しないお店をいくつか知っている。
あるお店はいつ行っても味は美味しいけど、ホールスタッフの接客が適当で、オーナーは奥にこもっているんもんだから結局リピートする気になれない。

恐らくオーナーの人は内向的で、人見知りなんだと思う。その気持ちはわかる。僕も人見知りで内向的だからだ。

けど、この立場になって「僕は人見知りで内向的なので人に会えません」は通じない。トップってそういうものだと思っている。
僕は新しい人に会う時は外交的な自分にスイッチを入れかえる。

この日も彼の笑顔での接客とハキハキとした声は、レストラン全体に安定感をもたらしていた。

さすが10年以上接客をしてきただけある。もう何歳になったかわからないが、相変わらず元気だ。

店舗ビジネスをしている人の中には、年を理由に現場に出ない人は結構いる。

彼らにとっては、それが”経営”らしい。皮肉に聞こえたら申し訳ないが、本当にパソコンと睨めっこが大事ならいいが、ぶっちゃけそうじゃないケースは結構あると思う…

まー僕は飲食やサービス業のプロじゃないし、自論はここまでにして、そんな彼と久しぶりに雑談をしていると、ここ数年の変化について面白い話を聞いた。

悩める台北の人材に対する最適解

実はこのお店は最近シェフが変わったらしい。

最近に限らずシェフが辞めるケースはちょくちょくあるのだが、ちょうど最近辞めたらしい。

今新しく料理を振る舞っているのは、アメリカ人のシェフだそうだ。彼いわく、「もう台湾人の人をあまり雇いたくない」とのことだ。

台湾人(厳密に言うと台北の人)は、隣の芝がすぐに青く見えて、すぐ辞めるらしい。

色んな人から同じ話を聞くし、僕自身も経験しているから、ものすごくわかるが、10年以上こっちで自分の力で飲食店を経営している人の話は重みが違う。

日本では、人が辞める事は割と大事に捉えられるが、台北にいるとその価値観をぶっ壊される。

僕の最初の社員の離職は、起業して2年経った後で、正直少し堪えたが、今はなんとも思わなくなってしまうほど免疫がついてしまった。

もちろん自分自身の経営に問題はあるのだが、あまりに頻発すると、忘れて切り替えないとやっていけない。

スポーツ選手が敗戦後ずっとクヨクヨしていたらダメなのと同じで、切り替えることを学習してしまった。

現在は、面接で求職者の話を聞く時も、どこか冷めた目で相手を見てしまう。

「はいはい、どうせ1-2年で辞めるでしょ」と。だから僕は入社したスタッフの実際のパフォーマンスだけを見る。

彼も同じだ。今まで散々辞める人を見てきて、今の彼の最適解は外国人の雇用だ。

今彼のレストランには、アメリカ人、オランダ人、アルゼンチン人、ミャンマー人、ベトナム人がいるらしく、かなり多国籍だ。

彼らは、移民ということもあり職が見つかりにくいのもあり、レストランとの相性が良ければ辞めないらしい。

もちろん、全員外国人という訳にはいかないから、台湾人も健在だ。

ボチボチな経営

その後も合間に彼と色々雑談をした。レストランの経営はどうか聞くと、「ボチボチです。いやー難しいですよね」と返ってきた。

僕は小さいながらも一応経営者だからわかるが、こういう返事をする時は、確実に状況はよくない。

こういう発言をする時は、大抵前年度に比べてそこまで成長していない時だ。

飲食店が売上/利益を増やすには、単純により多くのお客さんを接客するか、単価を上げるしかない。

そこで、「今お昼はどうされてるんですか?」と聞くと、お昼は開けずに、夜だけに集中していると返事が来た。

お昼を開けようにも、開けたり開けなかったりすると、お客さんはいつ来ていいかわからなくなるので、開けるならきちんと開ける必要がある。

けれども、やはり人材確保が安定しないし、昼は昼で開けると人件費と電気代やらが高いから、昼は開けられないらしい。

どうにか売上を回復させたい。けれども人材が確保出来ないからお店を開けないって話は、今まで散々聞いてきた。

台北も上海もどこも同じ

ふと思い出したのが、2020~2023年ぐらいにかけて少しお手伝いをしていた上海の会社の話だ。

この会社は、日本企業の中国進出を長年お手伝いしている。この会社の代表者と話して印象的だった話は二つある。

一つは、中国は金さえ払えばいくらでも解雇できる話。もう一つは、上海の人より地方から上海に出てきた人の方が勤続年数が長いって話だ(もちろん例外はあるよ苦笑)

中国では、解雇はかなり一般的らしく、勤続年数に応じてお金さえ払えば大丈夫らしい。ただし、そこを少しでもケチると、本気で訴えられるらしい。

次に、上海の雇用の話だが、基本上海が地元の人はよく辞め、地方から出てくる人は中々辞めないという話。

なんだか台北でも似た話を聞いた気が…😅

ただ昨今は失業率が上がって、上海の地元の人も迂闊に辞めなくなったとか…

東京も似ている気がする。
先日某不動産会社の社長さんと会食をしたが、最近会社を辞めた20代前半の息子さんも一緒に来てて、都心部に家がある人は辞めるハードルが低い事は間違いないと思う。

一方で、地方から東京に出てきた人は、辞めたら収入源がなくなって東京に住めなくなるから辞めづらいし、辞めるなら必ず次の行き先を見つけてから辞める。

ちなみに最近お仕事を辞めた20代前半の息子さんは次の転職先を見つけていない😅

一見すると台北も東京も経営者は解雇がしづらくて、都市部が実家の人は辞めやすいって点では似ているが、
台北の方が東京より地方からやってきて一人暮らしをしている人の数が圧倒的に少ない気がする(ちゃんと調べてないが..)

故に、僕は台北の方が”人の定着”という意味では、経営ハードルは東京よりも高い気はしている。

じゃー最適解は?

じゃーそんな台北での経営はどうすればいいのか?

今の所、僕も今回お話ししたレストランオーナーも、“移民の雇用”は鍵になっている気がする。

正直、台北以外が地元の人の採用もいくらかマシだと思う。

移民の人は異国だから、辞めたらマジで国に帰らないといけないから頑張る。

僕は前の会社を辞めた時、一応半年間のビザを念の為更新した後に起業をしたが、もし起業しないで転職活動を始めて、3ヶ月経っても仕事が見つかっていなければ日本へ帰っていたと思う。

applemint は日本人がマジョリティになったことで、離職率は大分安定した。今後はどうなるかわからないが…(そこは気をつけないといけない)。

もちろんここ1-2年で離職者はいたが、以前ならその離職者に続いて他のスタッフも辞めるようなことがあったが、ここ最近はない。

同じような話は、知り合いのサービス業の経営者からも聞いた。
少し給与が高くても日本人を入れたら経営基盤が安定したという話だ。

つまり今後台湾で求められる日本人は、日本からやってきて「君たち動きなさい!」というリーダー格の駐在員ではなく、むしろ現地スタッフと一緒にプレーヤー業務をする駐在員だと思う。

もういい加減、英語も中国語も出来ず、待遇だけが良くて現場業務をしない駐在員が台湾に来るのは辞めた方がいいと思う。

それよりも、現場に入り込んで中国語を学んでローカルスタッフとやりとりをし、3年は辞めないような駐在員スタッフの方が数字は確実に伸びると思う。
辞めるスタッフも減りそうだし、周りがそのスタッフの勤勉さに影響されてレベルを上げると思う。

みな考えていることは同じだなーと思った夜でした。