【台湾企業の日系企業との交渉失敗実例】日系企業が嫌がる台湾の商習慣
みなさんこんにちは、applemint 代表の佐藤 (@slamdunk772) です。
今日は少し視点を変えて、台湾人からの視点でブログを書きたいと思います。表題にもある通り、日本人及び日系企業が嫌う台湾人の商習慣というテーマです。
このブログは実は後日に換日線という僕がコラムを書いているところでも書こうと思っていて、実際にあったお話です。
端的に言うと、台湾企業がよくする値下げ交渉は、度が過ぎると良くないのだけど、台湾企業は中々加減がわからずに結局損をする、みたいなお話です。
別に日系企業とお仕事をしなくて問題がないのなら全然いいんですけど、昨今は多くの台湾人が日本へ旅行していますし、日本関連のビジネスを強化したいと思っている台湾の企業は結構いるじゃないですか。
だからこんなコラム/ブログを台湾人に対して書こうと思いました。
それを今回はみなさん向けに日本語で書こうってことです。
これからご紹介する事例は、みなさんには、当たり前に聞こえるかもしれませんが、結構同じ地雷を踏む人多いんですよ…
それではどうぞ!
事の発端と経緯
昨今、円安という事もあり、一部の台湾企業の間では台湾人にも人気な日本の芸能人やタレントさんをイメージモデルとして起用するニーズがあります。
僕らもひょんなことから台湾で人気の日本のタレントさんと繋がりを持ち、台湾企業に対して営業活動を行ったところ、某台湾企業が興味を示しました。
この台湾企業さんはまず僕らに起用したいタレントさんとご予算を提示した上で、僕らは日本の事務所に話を持ちかけました。その結果、残念ながらこの企業が提示した予算とタレントさんの金額の間でとても大きな乖離が発生し、このタレントさんの起用は断念することになりました。
仮にここでは、この企業の予算を10万台湾ドルとし、彼らが希望していたタレントをAさんとしましょう。金額の乖離は例えるなら、10万の台湾ドルの予算に対してAさんの金額は100万台湾ドルだったみたいな感じです。
10万台湾ドルでAさんの起用は難しそうだったので、僕らは、彼らに対して他に希望するタレントはいないか聞きました。その結果、この企業はBさんを手配できないか僕らに相談をしたのですが、なんと幸いな事に僕らが日本の関係者に確認した所、10万台湾ドルでBさんは問題ないとのことでした。
この時点では、まだ何も決まったわけではないですが、とりあえず次のステップとして、条件や詳細をつめる作業に進む事になりました。
一度決まった予算に対する値引き
台湾企業あるあるですが、台湾企業はよく予算を提示した後に、その予算を減らす交渉を行います。今回の場合も自分達から「10万台湾ドルの予算」と言っておきながら、「やっぱり8万台湾ドルで!」と後出しジャンケンをしてきました。
僕はこれは別に良い/悪いではなく、文化だと思っています。
今でも覚えてますが、僕が台湾の政治大学で経営学の修士課程を学び始めた頃、僕の一個上の先輩が僕にビジネスを紹介し、僕に見積もりをお願いしました。
ちなみにその時に僕が紹介してもらったのはデザインのお仕事で、実はちょこちょこデザインができます…てへ😅
それはともかく、僕はその時に自分が適正だと思う価格を提示したのですが、先輩には安く見えたみたいで、「お前これで良いのか?安すぎだろ!台湾はまず高めの見積もりを設定するんだよ!どうせ相手が値引きするから高くしておけ!」と言われました。
今でこそ、この意味を理解できますが、当時は習慣にない事だったので、少し不思議に感じていました。
話を戻します。元々Aさんは10万台湾ドルではとてもキャスティングできなかったので、お相手の希望でBさんに変更し、10万台湾ドルでBさんをキャスティングしようとしたら20%ぐらい値引きの依頼が来ました。
つまり、台湾企業からは、「8万台湾ドルでBさんをキャスティングできないか?」という相談が来たって事です。
また、この時についでに、8万台湾ドルは税込価格と聞かされました。正直これは難しそうだなーと思いながら渋々知り合いに相談しました。
ちなみに台湾の営業税は5%で、日本は消費税が10%です。つまり、台湾が日本に何かをお願いするときは、必然と台湾企業が提示した価格に対して 5% は高くなります。
なので税込価格で 20%を値引きすることは実質25%ぐらい値引きを相手に要求するようなものです。
しかもこの後更にこの台湾企業から、この値引き価格でイメージモデルのライセンス期間を更に半年伸ばせないか、相談が来ました。
これも台湾企業あるあるです😅 値引きをして更に要求を増やす…😲
一応事務所に相談をしましたが、これには明確に NG が来ました。また、台湾企業から最初に予算を提示された時から、実はもう交渉だけですでに1ヶ月経っており、その間為替レートが変動し、日本円が円高になり始めていました。
これ以上円高になると、むしろ僕らにはマイナスにもなりかねなかったので、最終決定の期限を設け、結果的に台湾企業からは No の返事が来ました。
その後の裏話
ここからの話は今回の台湾企業さんには話していません。別に隠したいわけではなく、話す必要がないので特に話していませんが、コラムには書いています。
その後僕は今回僕らとの間に入って頂いた関係者に謝ったのですが、その時にこの関係者の方から面白い話を話を聞きました。
今回の件に関しては、まず元々の予算 (10万台湾ドル) であればイメージモデルのライセンス期間半年延長はほぼ問題なかったとの事です。また、交渉の途中で値引きをせずに、初めから値引きした価格 (8万台湾ドル) と半年延ばしたライセンス期間で交渉をしていたら、もしかしたら問題がなかったかもしれないとの話でした。
この台湾企業は実にもったいない事をしたなーと思います。
一番問題になったのは、途中で値引きをした事です。元々10万台湾ドルで話をしていたのに、急に値引きをした事により、事務所は台湾企業に対して不信感を抱き、このまま何でも了承するとどんどんつけ込まれると危機感を抱いたそうです。半年間のライセンス延長を断ったのもこれが理由です。
日本人ならなんとなくわかりますよね。
つまり、初めから値引いた金額で、ライセンス期間や条件をきっちり定義し望んでいたら、この案件は成立していた可能性は高かったという事です。しかし台湾企業は、自分達の商習慣で日系企業との交渉に臨み、結果的に欲しかったものを得られなかったということです。
これはものすごくもったいないなーと思います。
日台交渉の違い
僕は台湾に住んで長いので値引き交渉が始まると、「またか…」って感じですが、慣れてない日本人にこれをすると、かなり警戒されるでしょう。
交渉における台湾と日本の大きな違いは、台湾企業は動きは早いけどランニングチェンジがよく起こるのに対して、日本企業は動きは遅いけど変更は少ないという点です。
台湾企業はやる気を見せてから実際にやるまでの行動は本当に早いと思います。ただ、見切り発車が多いので、議論を重ねるうちに欠点が明るみになり、その欠点を補おうと何回も値引き交渉が入る事は多々あります。
それに対して日系企業はやるかどうか決めるのは遅いけれど、一旦やると決めたら最初に提示したお見積もりで話が進むことが多いです。ここでの金額変更とかは滅多にないです。というかやったら前述した通り、相手の不信感に繋がるので、やる企業はいないと思います。
繰り返しになりますが、良い/悪いの話ではなく、ただの商習慣です。
ただ、もしも台湾企業が今後日系企業と付き合っていきたいのであれば、日系企業に対して過度な値引きや、最初に提示したお見積もりに対して何度も値引きをする事はしないほうがいいでしょう。
むしろ、最初の時点で予算と合わないなら、スパッと断ったほうがいいでしょう。
海外では値引きはむしろ当たり前ですし、日本が特殊と言えば特殊なのですが、日本でビジネスをしたいなら、残念ながらきちんと日本の商習慣を理解した上で仕事を進めるのがいいでしょう。
初めから値引きばかりして take する姿勢を見せていては、相手に警戒され結局利益を最大化できないようなことがおきます。
ちなみに日系企業は日系企業でも、僕の過去の経験上、中小企業は割と寛大で柔軟性ありますが、大企業はケチで柔軟性がなく、融通が効かない事が多いです(苦笑)まー組織が大きくなるとそうなりますよねー
以上、applemint 代表佐藤からでした