【日系通販企業が逃した台湾主役の座】ONE BOY になれたのに…

みなさんこんにちは、applemint 代表の佐藤 (@slamdunk772) です。

今日は台湾に進出した日系企業は主役になるチャンスがあったのに、そのチャンスを逃してしまったというお話をしたいと思います。

結論を話すと、効率や費用対効果ばかり意識すると、逆に非効率になるよね、みたいな内容です。

先日釣り歴24年の方とお話をしていて、その方がこんな事を言ってました。

“釣りの経験がある人ほど、特定の魚を狙って釣ろうとして、それが魚に伝わって釣れないんだよ。逆に素人は素直に人の話を聞いて純粋に釣りを楽しむから釣れるんだよ”

なんかこれってすごい深いというか、人生やビジネスにも通づるものがあると思っています。

台湾に進出した日系通販企業は釣りで例えると、効率を求めゴリゴリ釣ろうとしすぎた結果、逆に魚(消費者)に逃げられたみたいな感じですかね。

今日はそんなお話をします。

日系通販企業が台湾でした事

台湾に進出した日系通販企業は主役になれないまま、多額のお金だけが消え、気づいたら数年の月日が流れました。

通販企業は実店舗を持っていません。

彼らのビジネスのやり方は、主にオンラインで広告をして、顧客を獲得して、獲得した顧客を分類してリピーターに繋げたり、別の商品を販売します。

そのため、日系通販企業の鍵になるのは広告から如何に顧客を取れるかです。また、彼らは実名や個人情報を取得できる形で顧客を獲得しようとします。

個人情報を取ることが出来れば、広告費をかけずに既存顧客にアプローチをし、他の商品を販売する事が出来るためです。

現代で個人情報が取得出来る広告はデジタル広告という事で、一時期台湾に進出した日系通販企業さんは、ものすごい金額の広告費を デジタル広告に費やしました。

ONE BOY がした事

ここで話を一旦 ONE BOY という企業に移します。applemint lab や applemint の HP でたまにこの企業のお話をしていますが、ONE BOY は最近台湾で話題のアパレル会社です。

なぜ話題かというと、”超”がつく有名な芸能人を同時に数名起用し、台湾の地下鉄やバス停など至る所に広告を出しているためです。

広告費用は数億円以上とも言われています。

あまりにも話題に上がるので、多くのメディアが ONE BOY について取り上げ、いつの間にか ONE BOY は無視できない存在になりました。

そんな世間に注目されまくっている ONE BOY ですが、実は費やした広告費は恐らく台湾に進出した通販企業とそんな変わりません。

というかむしろトータルで見ると台湾に進出した日系企業の方が広告費をかけていると思います。

某日系通販企業はすごい時で1ヶ月に1千万元 (4400万円) 以上の広告費を、何ヶ月も連続でかけていました。

しかし一方は注目されず、一方は注目されまくって売れました。この差はなんなんでしょう?

日系通販企業が ONE BOY の事例から学べる事

森岡毅氏の『確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力』によると、売上の公式は以下です:

売上 = 認知度 x 荷配率 x Preference

荷配率とは Distribution を指します。要するに商品やサービスを知った後にその商品にアクセスできるか否かという事です。

例えば高齢者はテレビで商品を知っても、ネットでしか買えなかったら購入を諦めるかもしれません。

ONE BOY はどこへ行っても ONE BOY の広告を見るぐらい認知度を上げましたが、実は同時期に実店舗を至る所でオープンさせました。

これはまさに 『認知度 x 荷配率』を網羅したお手本のようなマーケティングです。

Preference とはある商品を買う時に消費者が何を気にするかです。Preference は主に3つに分解されます。

  • Brand Equity (ブランドイメージ)
  • 価格
  • 機能

例えば化粧品の Preference はうちの女性スタッフにヒアリングした所、1. 価格、2. Brand Equity、3. 機能 のようでした。

日系の通販企業も商品に合わせて消費者の Preference を理解し、初めから森岡さんの公式を当てはめれば随分違った結果になっていたと思います。

彼らは認知度や配荷率を上げることは意識せず、あくまで個人情報を取得する事にこだわりデジタル広告を出し続けました。

デジタル広告にはフリークエンシーという指標があるのですが、これは広告の露出頻度を指します。

通常企業は一個人に対して広告の露出は、マックス4回ぐらいに抑えるものなんですが、通販企業はその辺無視します😅

彼らはデジタル広告からの購入がビジネスの肝なので、広告を出しまくって嫌われようが何しようがデジタル広告にこだわります。

その結果、僕は逆に広告をスルーする人が増え、金は出しているのに、効果は得られない状況になった気がします。

本当に勿体無いと思います。

日系通販企業はなぜ ONE BOY になれなかったのか?

最後に、日系通販企業は ONE BOY と同じぐらい広告費用を投じたのに ONE BOY になれなかった理由についてお話しします。

色々な考えがあると思いますが、僕はまとめると以下が原因だったと考えます:

  1. 顧客情報を得るためにデジタルにこだわった
  2. 柔軟性の欠如

まず日系通販企業がデジタル広告を通じて、あまりに直接購入や顧客情報を取得しようとしたのは、まずかったと思います。

顧客情報を獲得できるのはデジタル広告だけなので、通販企業は小売店での販売を避けました。

しかし現在人々は購入に対するハードルがどんどん上がっていて、購入に保守的になっています。みんな失敗したくないんですね。

なので今の人は新しい商品やサービスは、余程の事がないと買いません。逆に昔から知っている商品やサービスは一層利用する傾向にあります。

タイタニックやスラムダンクといった映画のヒットは、失敗したくない現代人の心理を反映しているようです。

なので今後は新商品をデジタル上だけで、販売するのはなかなか難しいでしょう。実物を見る事も触ることも出来ないものなんて失敗の確率が高すぎます。

なので、顧客情報獲得にこだわり、デジタル広告だけにしようとしたのがそもそも問題でした。

そこで考えを改め、プラン変更が出来れば良かったのですが、彼らには柔軟性が欠如していました。

日系の通販企業はあくまでDtoC のやり方にこだわったのです(現在進行形)。

DtoC とはただの手段であり、目的ではありません。それが日系の通販企業は通販で売る事が目的になり、いつまでも目的を買えられず今日まで苦戦しています。

改めて目的の明確化、そして柔軟性(適応力)が海外ビジネスで大事な事を思わされた思います。

以上applemint 代表佐藤からでした!