【高齢者がゲーマー!?】日本の秋田県が挑む高齢化への対策

みなさんこんにちは、applemint 代表の佐藤 (@slamdunk772) です。

僕は毎月定期的に換日線というメディアにコラムを寄稿しているのですが、書く際はいつも日本語で書いた後に中国語に翻訳して、編集者に渡しています。

日本語版はいつも誰の目に触れる事もなく、ひっそりと消えてます😭

そこで、ふと思いました。「あれ、日本語で書いたコラムもったいなくない?」と。

そこで、applemint lab では特別に僕が日本語で先に書いたコラムを今後公開したいと思います!

台湾人向けに書いているので、日本人の人が読むと、「ん?」と思う所はありますが、その点はご容赦ください!

秋田県の現状

みなさんは日本の秋田県がどんな所かご存知ですか?

日本人の僕でさえ、「秋田」と聞いても、「秋田犬」と日本酒で有名な「新政」とか「大曲花火大会」ぐらいしか、思い浮かびません…

残念ながら秋田県はインバウンドで観光に来る観光客が少ない都道府県としても知られていて、秋田県庁の資料によれば、秋田県は東北の中でもインバウンドの宿泊者数が一番少ない都道府県として知られています。

参考:秋田県庁統計資料

日本の観光インバウンドは二極化が進んでおり、例えば2019年コロナ前に東京に訪問した外国人の数は1410万人だった一方で、秋田県は10万人ちょっとでした(108,498人)。

参考:東京インバウンド数

参考:秋田県インバウンド数

また、高齢化も深刻で、内閣府の調査によると、秋田県は日本で一番高齢化率が高くて、その数字はなんと38.1%です。高齢化が最も低い東京の22.9%と比べると、如何に高齢化が深刻なのかがわかります。

参考:内閣府資料

こうした問題は秋田県に限らず、今後台湾の都市でも起こるでしょう。では台湾の都市はどのようにしてこの問題と向き合えばいいのでしょうか?

実は高齢化やインバウンドで問題を抱える秋田県で面白い取り組みが始まっています。今日はその面白い取り組みをみなさんにご紹介し、台湾の地方過疎化や、高齢化問題に対するアイデアの役に立てばと思います。

高齢者限定e-sportチーム『マタギスナイパーズ』

秋田には現在マタギスナイパーズというプロのe-sports の集団がいます。メンバーは全て高齢者で、女性も男性もいます。

HP:https://matagi-snps.com/

HP を一度ご覧ください!ものすごくかっこいいサイトです!

「マタギ」とは秋田の言葉で「狩人」という意味です。

先日僕はマタギスナイパーズを立ち上げた人と飲んだのですが、その方の発想が面白く、その方曰く、立ち上げた理由は「どうせ高齢化の波は避けられないなら、高齢者を活用すればよくない?」と思ったそうです。

チームは3つのレベルに分かれていて、それぞれ、Fortnite、VALORANT、Apex Legends をプレイしてます。一番上手い人が所属するAチームは大会にも積極的に参加しています。

leo

初心者は Fortnite から始めるそうです。僕は Fortnite クソ下手で、最下層グループで最高位2位です…

興味深いのは、創設者が介護の一環で e-sports を組んだのではなく、あくまでプロとして活動するためにマタギスナイパーズを結成した点です。

そのためどんな高齢者も入れるわけではなく、厳しい審査に通った高齢者のみが活躍しています。

また、給与はないため、基本的に年金が受給できる人が対象者です。

給与がないにも関わらず、マタギスナイパーズのメンバーは一日10時間ぐらい練習をしています。

何が彼らをそこまで突き動かすのか?ヒントは、コミュニティと社会との繋がりです。

チームでゲームをする時に大事なのは、コミュニケーションです。Fortnite にしろ Apex Legends にしろ、シューティングゲームは相手の位置を的確に把握し、他のメンバーに具体的に共有する事が大事です。

要するにチームワークが大事ということです。

彼らはコミュニケーションを通じ、メンバー同士の絆を深め、いつの間にか自分のためではなくチームのために練習をするようになるそうです。

また、65歳で定年になった人は基本的に元気です。結構動けます。しかし社会に出ると、「あなたはもう働かなくていいです」という先入観を持たれます。

マタギスナイパーズのメンバーは、e-sports を通じて自分が社会に必要とされる事に生きがいを感じているそうです。

もし可能であれば、僕も同じようなチームを台湾で立ち上げ、今後日台で高齢者同士の対決が出来れば面白いなーと思っています。

leo

ただしマタギスナイパーズはかなり強いため、今立ち上げてもボコボコにされるでしょう…

東京の競争を避け、秋田県で採用

秋田県に移住して、より充実した生活を送りませんか?と提案して採用活動をしている企業があります。

東京で年収1,000万円をもらっていても結婚して子どもがいる人は、23区では家を買えないなんて話をよく聞きます。

東京では、塾やサッカー、プール、ピアノ教室などの費用を毎月払うと、子ども一人ですぐに数十万円の費用がかかります。

先日お会いした秋田県に会社を持つ方は、秋田県の小中高を卒業した後、東京で起業したものの、その後仙台に移住し、生まれ故郷である秋田県に会社を立ち上げました。

現在彼は毎週東京、仙台、秋田を行き来する暮らしをしています。

彼のクライアントの多くが東京にいる事が多いため、彼はどうしても毎週東京には行かなければいけません。しかし仕事柄、物理的な場所はあまり問題ではないため、社員は3拠点で仕事をしています。

彼が秋田と仙台に会社を立ち上げたのは、東京での人材競争を避けるためです。

いくら稼いでもなかなかお金がたまらない東京の暮らしに嫌気がさした人に対して、彼は「秋田にくれば飯が安くてうまくて、スキーし放題だよ!」とコミュニケーションをしているそうです😎

また、彼の会社では社員が東京、仙台、秋田を定期的に行き来し、このローテーションが評判を呼んでいるそうです。

こうしたユニークな制度や取り組みが話題を呼び、彼の会社には毎月SNSに数十件の応募問い合わせがあるそうです。

秋田県の企業から学べる事

こうした秋田県にある企業の事例から学べる事は二つあります。

  1. 高齢者の活用
  2. 地方都市と都会のローテーションとコストダウン

残念ながら e-sports は1-2年で収益化できるビジネスではありません。マタギスナイパーズのメンバーは給与を受け取っていないものの、練習場にはコーチがいるので、コーチの給与や練習場の家賃、コンピューターの購入費や、電気代はかかります。

しかし定年退職した高齢者を再雇用して、単純作業をさせるような取り組みと違い、マタギスナイパーズの取り組みは高齢者に生きる生きがいを提供しています。

毎日6時間以上の厳しい練習があるにも関わらず、応募者は絶えないそうです。

この取り組みに共感して、日本の大手製薬会社や名だたる企業がスポンサーをしています。

マタギスナイパーズのように、まだまだ元気な高齢者に対して、社会と関わる生きがいを与える取り組みは台湾だけでなく世界が学べると思います。

また、都会での生活が嫌になった人に対して秋田県で働けるオプションを提供し、定期的に秋田、仙台、東京を行き来させる仕組みはかなりいいなーと思っています。

同時にこの企業は秋田県で人材を雇用する事によって、東京で雇用する場合に比べて人件費を抑えられています。

色んな都道府県に支社を持つ、大手企業も同じ事が出来そうですが、多分しません。面倒だからです😂

経営するとわかりますが、複数の拠点に人材を定期的な移動させる事は一般の方が思う以上に面倒です…

日本は世界でも最も高齢化が進む国の一つです。今後も高齢化社会に対する解決策は日本の先行事例を見るといいかもしれません。