【過去ブログ公開】 17億円を調達した台湾スタートアップの社長と話して気づいた、台湾企業と日本企業の海外進出のやり方の違い (2021年11月30日)
みなさんこんにちは、applemint 代表の佐藤 (@slamdunk772) です。
僕は先日うちのクライアントで2021年10月に17億円の資金を調達し、日本進出を本格化すると宣言した台湾のスタートアップKdan Mobile の社長 (ケニー氏) と話す機会がありました。
僕よりも数倍忙しい彼が当日は1時間も時間をとってくれて、色々話すことができました。
今回のブログではその1時間のお話の中で、特に印象的だった事を1つだけお話ししたいと思います。ズバリそれは「代表者」に対する考えです。
僕はこれまで台湾で実に多くの日系企業の進出をお手伝いしてきました。失敗も成功も見てきました。その中で日系企業が台湾で失敗している原因の1つが「代表者」なんじゃないかなってケニー氏と話をしていて思いました。後ほど詳しくお話しします。
ちなみに、Kdan Mobile はもうすでに中国とアメリカに進出していて、どちらの国でもそこそこうまくやってます。
「なんで台湾から人を送るの?」
僕らと Kdan Mobile は一緒にお仕事をしてもうかれこれ1年ぐらいになります。ただし社長と話すのは今回が初めてでした。僕は社長にお会いする前に一応それなりのリサーチをし、Kdan が 17億円を調達し日本進出を本格化させる事を把握していました。
その上で僕がまずした質問は、「日本に本格的に進出する事になったら誰を日本に派遣するんですか?」でした。すると彼は、「誰も送らないよ。コロナが落ち着いたら僕が日本に行って、数名と面接をして現地で代表者を探したい」と答えました。
僕は心の中で「日本人は勤勉だし、いい人見つかればそうするよなー」なんて思いつつ、すぐに彼に質問した内容が如何にばかだったか気付きました。
というのも、僕はこれまで台湾に進出した日系企業のお手伝いをしてきて、代表者はよく日本人だった事から『海外の会社の代表者 =HQ から派遣された人』という認識が頭にあったのです。
しかし、これって実は主に日系企業だけの常識だったりします。その後台湾にある外資系の企業を調べると、例えば台湾のマイクロソフトの代表者は、2021年11月29日現在 Ken Sun という台湾でキャリアを積まれた方ですし(恐らく台湾人🙃)P&G もユニリーバーも代表者は台湾人のようです(間違ってたらすみません!)
もちろん外資系企業の中には、HQから人材を派遣するケースはたくさんありますが、台湾にある日系企業のように当たり前にHQから代表者を派遣する事例は少ないと思います。
日本にある外資系企業の代表者はどうか?
次に僕は念の為日本の外資系企業に目を向けてみました。日本で割とうまくやっている外資系の企業の代表者は日本人なのか?或いは外国人なのか調べるためです。
まずは、僕が以前マーケティングの担当をしていたマイクロソフト日本法人を見ました。2021年11月現在の社長は吉田 仁志という日本人です。その前の代表者も日本人の方ででした。
その他 Google も調べたら日本人が代表者でした (2021年11月現在)。Facebook Japan も日本人が社長です。
これはもはや偶然とは言えないぐらい、日本にいる外資系の企業は代表者が日本人です。むしろわざわざアメリカ本社から誰かを社長に据えているアメリカの会社を探す方が難しかったです。
外資=アメリカの企業みたいな言い方してますが、恐らくヨーロッパの企業も同じだと思います。
つまり日本にいる外資系企業の多くはこの台湾のスタートアップのように現地の人間をトップに置いているのに、台湾にある日系企業はわざわざ HQ から派遣した日本人をトップに置いているということです。
在台の日系企業の代表者がほぼ日本人である事実とその訳
ではなぜ台湾にいる日系企業の代表者は日本人ばかりなのでしょうか?台湾にある色んな日系企業を見てきた僕の予想は以下です:
- 会社としてそういう待遇を準備している(駐在員というポストがある)
- 台湾人が自分達の企業文化を理解しない事を恐れている
- 乗っ取られないため
- 日本人でないと所謂日本の品質は保てないと思っているため
- 人材育成(ただし人材育成目的の場合は「代表者」よりも課長ぐらいのポジションが多い)
ざっとこんなところかなと思います。特に#1の要因が大きい気がします。「駐在員」というポストは日本で地味なサラリーマンライフを送る人にとっては高待遇で実に魅力的です。
しかし会社経営という立場から考えると、駐在員の給与は非合理的です。特に日本より給与水準が低い台湾では尚更です。
なぜなら台湾では日本人駐在員にアホみたいな高待遇を用意するより、その半分の待遇で優秀な台湾人人材を代表に置くことが可能だからです。また、当然ながら台湾人の方が台湾のビジネスを理解しているわけで、日本から現地の事情を理解していない人をわざわざ送るのはとても非合理的です。
Kdan Mobile のケニー氏はこの事をとても理解していて、台湾から比較的安い人件費で日本に誰かを送るより、人件費が少々高くても日本で 1000 – 2000万円の人件費を払って日本人の代表者を据えようとしています。
Next Action:台湾で本気で成功したかったら
ここまでお話ししたらもう結論はわかっていると思います。もしも台湾に進出する場合、僕は長期的には台湾人、或いは台湾現地を非常に理解していて当然中国語も話せる日本人を代表者 (総経理) に据えるべきだと思っています。
どうやら台湾にある日系企業の多くは長期的に台湾人を代表者にする考えはないため、いつも「次は誰を送るか」という前提で台湾に進出しています。
また、台湾人を代表者にする場合は日本語が出来て日本の大学を出たか或いは日本で就業経験のある人を選ぶといいと思います。日本のアメリカの外資系企業の社長さんを見るとほとんどが英語を話せて、外資系を渡り歩いている人が多いです。
マイクロソフト日本法人の代表者さんはアメリカの大学を出ていますし、台湾のマイクロソフトの代表者もアメリカの大学を卒業していました。みんな「アメリカのやり方」を理解している人材です。
代表者を現地の方にするベネフィットはみなさんが思っているよりあります。
- 商品やサービス、ビジネスをローカライズできる
- 通訳の人件費がいらない
- 部下とのコミュニケーションがスムーズになるためスピードが上がる
- 駐在員の高額な人件費を削れる
「いやー理屈ではわかってるけどそれが出来ないんだよ佐藤さん!」と思っている方は多いでしょう。
僕は会社の代表なので、みなさんの気持ちは分かります。僕も仮に例えばタイに進出する事になった際、タイ人を代表者に据えるのは心配です。しかしそれでも長期的にはタイ人を代表者にするという前提で人探しをすると思います。
以上佐藤から、海外進出がスタンダードなスタートアップの社長と話して気づいた、たった一つの重要な事でした!