相手の業界を理解するだけ結果が変わる事

みなさんこんにちは、applemint 代表の佐藤 (@slamdunk772) です。

今日は相手の業界を理解するだけで、交渉のスタンスが全然変わるし、結果も全然変わるよねーという話をしたいと思います。ある業界の実例をご紹介します。

以前以下のブログで、台湾の企業が日系企業の商習慣を理解せずに交渉が失敗に終わった事例をご紹介しました。

今日のブログはその延長で、ある特殊な業界の特殊な事情についてお話をしたいと思います。読む人によっては全く興味のない業界の話かもしれませんが、普段皆さんが知り得ない業界の裏事情についてお話をします。

そんな業界だからこそ、情報は中々表に出ないので、人々は交渉の仕方を理解できないと思います。しかし、今回の事例を通じて、営業や面接の基本である相手について調べる事の重要性を改めて認識できると思っています。

僕も最近は時間がなくて訪問先の会社の事を中々ちゃんと調べられていません。その結果、商談がうまくいかないことも多々あります。

日本出張で気付かされた相手を調べる重要性を再認識できればと思っています。

とても特殊なアダルト業界

突然ですが、アダルト業界の話を少しします。これから話す内容にはスケベな要素は一切ないのでご安心ください。この業界が特殊で、今回ケーススタディとして取り上げようと思いました。

アダルト業界と聞くと、反社会的勢力や悪いイメージを持つ方が一般的ではないでしょうか?僕もそういったイメージを持っていましたし、近寄ろうとも思いませんでした。また、一人一台スマホを持つ時代になり、若い頃からネットに接続できるため、ネット上に氾濫するポルノは度々人々の批判の的になります。

そんな業界だからこそ、内部にいる人たちはあまり業界のことを話そうとはしません。それが人々にとって、一種の神秘性や怖いイメージにつながっているのだと思います。

先日のブログでは、某台湾企業がある “タレント” さんをイメージモデルに起用しようとしたと書きましたが、そのタレントさんは実はセクシー女優さんでした。

近年の円安と台湾人男性のセクシー女優に対する認知度の高さを利用し、台湾企業が日本のセクシー女優さんをキャスティングするケースが増加傾向にあります。台湾では最近、2〜3ヶ月に1回の周期でセクシー女優さんを招待したイベントが行われ、ファンイベントも多数開催されています。需要があるのでしょう。

そんなセクシー女優さん並びにアダルト業界ですが、今回僕はとある台湾企業から依頼を受け、先日紗倉まなさんのキャスティングでお世話になった制作会社さんにキャスティングの相談をしました。

結果的にキャスティングは失敗に終わりましたが、色々とご迷惑をかけたので、先日の日本出張の際に謝罪を兼ねて制作会社さんを訪問しました。そこで驚くべきアダルト業界の話を聞くことになりました。

セクシー女優さんは女王様

日本の芸能界がどうなっているのかはわかりませんが、アダルト業界ではセクシー女優さんはまるで女王のような存在だそうです。セクシー女優さんが「撮影をしたくない」と言えば、現場スタッフはそのわがままに付き合うしかなく、撮影は強制終了となるそうです。また、セクシー女優さんが「やりたくない」と言ったことに対して、事務所もプッシュできないそうです。

例えば、過去にはある撮影現場で、女優さんが突然「今日は撮影する気分じゃない」と言って、現場が解散になったこともあるそうです。

そのため、事務所(アダルト業界では「プロダクション」と呼ばれるそうです)は、常に所属するセクシー女優さんに細心の注意を払っています。なぜなら、彼女たちが「No」と言えば、何も仕事を前に進められないからです。

一般社会人である僕らからすると、「会社の言うことは絶対だろう。頑張れよ」と思うかもしれませんが、アダルト業界は常にセクシー女優さんを中心に動いているそうです。

今回、僕は某台湾企業に依頼されキャスティングを試みましたが、台湾企業からの複数回にわたる値引き要求や条件の変更により、セクシー女優さんがやる気を失い、「やりたくない」と事務所に伝えたそうです。こうなってしまうと、会社側がどれだけ頑張っても、セクシー女優さんに仕事をお願いすることはできません。

僕は、まさかアダルト業界がこのようにセクシー女優さん中心で回っているとは知らず、事務所やマネージャーの方が力関係では上だと思っていましたが、これも一つの学びになりました。

今後、キャスティングをすることはほとんどないと思いますが、もしそういった機会があれば、僕らは常にセクシー女優さんの気持ちを尊重し、依頼をする必要があるということです。

とってもシビアなセクシー女優さんの世界

女王のように扱われるセクシー女優の世界は、羨ましく思えるかもしれませんが、その現状は非常にシビアです。デビュー作が一番売れると言われており、デビュー作が売れないとすぐに契約を切られます。

また、セクシー女優さんたちの間では、僕らが見えないところで嫉妬やさまざまな感情が渦巻いています。これは芸能界でもサッカー界でも、会社員の間でも当然あることです。

例えば、今回キャスティングのオファーを出したセクシー女優さんに対して、僕らはお断りを入れましたが、その際に女優さんからは「私じゃなくて他の人にオファーするのね(怒)」と思われたようです。

女王のような扱いを受けるが故か、トップ女優の方々は「自分が一番」と思っているケースが多く、だからこそ他の人に仕事を取られると、それが自分が受けたくなかった仕事であってもムカつくわけです。

今回は、間に入ってくれた方が業界で20年の経験と知名度があったからこそ場を収めることができましたが、とても素人の会社がハンドリングできるケースではないと感じました。

DMM の脅威のテイクレートとビジネス

最後にDMMの話をして今回のブログを終えます。DMMを理解すれば、アダルト業界の全体像が見えてきます。結論から言うと、控えめに言ってもアダルト業界をコントロールしているのはDMMだと思います😲

DMMは元々アダルトビデオのレンタル業務から現在の地位まで上り詰めましたが、現在のアダルトプラットフォームもほぼ独占状態です。彼らがアダルトビデオの売買やストリーミングなどを提供するFanzaというウェブサイトは、日本でもトップクラスの流入を誇ります。

それ故に、出品者に対する姿勢も強気で、出品者に対するテイクレート(手数料)は70%を超えるケースもあります。この70%は、いわゆる”部外者”に対するテイクレートのようです。ここで言う部外者とは、DMMと資本関係がないメーカーに対するテイクレートです。

アマゾンでさえ30-40%のテイクレートなのに、70%は正気の沙汰じゃないぐらい強気です🙃
それでもFanzaで出品しないと売れないため、皆さん出品するのでしょう。ただ、DMMの資本が入ったメーカーに対するテイクレートは異なるようで、僕はそこまで数字を把握しているわけではありません。

DMMは、実は自分たちの資本が入ったアダルトメーカーをいくつも抱えています。彼らの資本が入ったメーカーのことを業界ではWILL系と呼びます。WILL系の傘下にどんなメーカーがあるか知りたい方は、リンクをクリックしてみてください。恐らく男性なら一度は見たことがあるメーカーの名前が出てくるでしょう。

アダルト業界の関係者に話を聞いたところ、作品が売れる一番の要素はキャスティングした”女優”で、サッカーのビッグクラブと同じように、お金があるチーム(メーカー)ほど良い人材を集められます。

近年は、元芸能人や元グラビアアイドルなどの女性がアダルトビデオにデビューするケースが増えていますが、そんな方々をキャスティングできるのはお金があるメーカーだけです。

アダルト業界は昔こそ羽振りが良かったものの、近年は違法サイトへのアップロードの影響もあり業績が悪化し、そこまで財政的に余裕のある会社が多いわけではありません。

そんな中、DMMはアダルト以外の事業多角化に成功し、潤沢な資金を持っているため、他社よりも良いギャラをオファーし、売れそうな女優さんのキャスティングに成功しています。厳密にはDMM が直接お金を出す訳ではないのですが、DMM と間接的に資本関係のある WILL 系のメーカーさんは他社よりもいいオファーを提示できるということです。

DMMはアダルトサービスで自分たちの地盤を固め、テイクレートを上げても出品する環境を作り、アダルトで儲けたお金でアダルト以外にも事業を拡大し、更なる利益を生み出しました。

同時に、アダルトの地盤を強固にするため、ただのプラットフォーム提供者から、プラットフォームと作品を提供する側の両方で独占に近いポジションを築きました。これこそ戦わずして勝つ、まさに兵法のお手本のような戦い方です。

もしも僕がアダルト業界の中にいたら、絶望的になるほどDMMのエコシステムが出来上がっているので絶望しますが、側から見ると本当にお手本のような戦い方だなと思います。

今回はたまたまアダルト業界についてお話をしましたが、大事なのは、このように自分たちが相手にする顧客のエコシステムや内部事情を理解すると、顧客のニーズや顧客が抱える問題がより鮮明になるということです。

多くのアダルト関係者が海外に活路を見出そうとしているのは、日本のこのどうしようもないほどDMMで固められた市場を出て商売をしたいからなのだと思います。