【台湾における販売の新時代】ローカライズの意味
みなさんこんにちは、applemint 代表の佐藤 (@slamdunk772) です。
今日は台湾における販売が新しい時代に突入しつつあるお話をみなさんに共有できればと思います。
コロナが明けて日台の往来はほぼ回復しつつあります。2023年上半期の台湾人の日本訪問者はコロナ前の2019年の7割まで回復しています。この調子だとおそらく2019年の水準に戻るのは時間の問題で、むしろ2019年よりも多くなる可能性さえあります。
何が言いたいかと言うと、台湾人が日本の商品にアクセスしようと思えば、本当に出来ますよ、ということです。また、先日僕のマンションの配達物置き場にアマゾンの箱があって、(恐らく)日本のアマゾンから直接購入する人も増えているんだろうなーと直感的に思いました。
では、そんな時代に求められる台湾での商品、或いは販売方法は何でしょうか?今日はそんなお話をしたいと思います。
日本の化粧品が台湾で売れない!?
先日台湾で日本の中小企業の化粧品販売を手掛ける会社の代表者とお話をしました。そこで、議題に上がったのが、台湾で日本の知名度の低いブランドの化粧品が売れなくなってきているというお話です。
彼の会社では日本の所謂通販企業の商品や、越境ECの日本商品を多く手掛けていて、それらの商品がことごとく売れないという話になりました。
理由はいろいろあるでしょう。そもそも日本から台湾に物を運ぶと、関税や輸送費で商品はどうしても高くなります。
その一方で「代購」(日本から商品を買ってきて台湾で販売をする人)は関税を払わずに安価に Shopee で販売をしています。
その上インターネットがこれだけ普及して誰もが発信者になった時代なので、消費者の商品に対するリテラシーが上がりました。
例えば化粧品の主成分は水で、その他の成分に関しては正直どの化粧品もあまり変わらない事を消費者は理解し始めています。
その結果、お手頃価格な無印の化粧品が売れ、ニッチな訴求をしない化粧品以外は ”機能” よりも、イメージやブランド、ラグジュアリー感で攻めるブランドの化粧品が勝っています。
また、日本人に売れる商品が台湾人にも売れるかと言うと、当然ですが違います。炊飯ジャーや魔法瓶などアジア人に普遍的に売れる商品が存在する事は事実ですが、それ以外は厳しいでしょう。
それなのに日系企業の中には未だに日本の優位性を信じて疑わず、日本ブランドは信頼性が高いから売れると考えている人が実に多くいます(特に海外経験が少ない企業:東京や地方など場所を問わず)。
とは、ここまではよく聞く話です。では、なぜ日本の化粧品や日本の商品が売れないのかもう少し詳しく説明をしていきたいと思います。
自社ECもダメ、小売店もダメ、大手ECもダメな理由
例えば日本の通販企業が台湾に来た時、彼らがまず考えるのは自社ECでの販売です。台湾は中国と違い自社ECサイトでの販売はまだ希望があります。
中国は偽サイト(詐欺サイト)が横行しているため、自社ECサイトを立ち上げても消費者はそのサイトを信頼しないから売れないと言われています。
その点、台湾は自社ECサイトで商品がまだ売れます。しかしながら、それでも詐欺サイトはあります。そのため、近年は値引きされてでも大手ECサイト PCHOME や momo で販売を強化する企業が増えています。
ただ、PCHOME やmomo 上で売れる商品と、お店で売れる商品が違う事は多々あります。例えば小売店では坪単価の売上がバイヤーに求められます。彼らは 1坪でどれだけ効率よく物を売れるかを常に考えています。
そうすると、自然とスペースを取らないけど少し値段が高くてブランド力があるが故に売れる商品がバイヤーに好まれて売れます。
一方の大手ECサイトは商品の手数料からマネタイズをするため、坪単価よりも、如何に単価の高い商品から高い手数料を取るか、安くてもガンガン売れる物を売るインセンティブが働きます。
これは小売店のスペース vs. 倉庫のスペースの違いから来ています。
何が言いたいかと言うと、日本の商品をただ台湾に持ってきて売ろうとしても、販売先が異なれば売る(売れる)商品の性質が変わると言う事です。これを考えずにただ日本の商品を台湾に持ってきても、もう売れないって事です。
日台の往来がここまで盛んではなかった数年前は売れたかもしれませんが、人口2300万人の台湾人が年間400-500万人行く今の時代に “日本” の商品である価値は薄れています。
そのため、本気で台湾で商売をしていきたいなら、台湾での販売先に合わせてパッケージの開発をし、台湾のトレンドに合わせて商品の開発をする事が推奨されます。
この商品企画や開発を日本でしていたら、商品が台湾に入る前に成分チェックだけで数ヶ月かかり、その頃には流行は過ぎています。
つまり、台湾での日本商品の販売は台湾での 商品開発(OEMに外注)という次の段階に来つつあります。
もちろん全ての日本商品を現地 OEM に外注する必要はありません、少なくとも化粧品や健康食品などはそうした方がいいでしょう。
アメリカや地理的に日本より遠い国での販売であれば、日本の商品をそのまま持って行ってもまだ戦えると思いますが、台湾に関して言うと、ただただ日本の商品を越境ECなどで売るようなやり方はギャンブルになりつつあります。
リピートは商売の大前提
先日僕がお話をした台湾で日本の化粧品などの販売を手掛ける代表者の実家は、なんと50年続くステーキ屋さんです。そのステーキ屋は昨今の物価高の影響もあり、現在は原価が40%近くになっています。飲食の原価は20-30%と言われているので、この原価はかなり高いです。
しかしこのお店は続いています。それはリピーターがついているからです。店主にはもっと安いお肉を仕入れるという選択肢もありますが、いいステーキを出すために高くても同じ牛肉を仕入れています。
それはいいステーキを出せば、いいステーキを求める顧客がリピートするためです。結局商売とはリピーターがいないと成り立たない事を示す事例だと思います。
僕は正直越境ECに対してあまり肯定的ではありません。その理由は越境ECがリピート購入の促進に繋がる気がしないからです。
iHerb のようなサイトはともかく、海を越えて渡ってくる商品をリピートして購入するイメージはありますか?僕にはありません。
リピートしてくれるお客さんがいなければ、新規顧客獲得のために一生広告費を出し続けることになります。
同様に”バズる”というのもあまり好きではありません。バズって一時的に売れてもリピート購入に繋がらなければ商売の存続は難しいでしょう(商品を知ってもらうきっかけにバズらせるのはいいかもしれませんが…)
だからこそ僕が思うのは、越境ECでも一時的な台湾への販売テストでも、売った後、継続的に売るにはどうしたらいいか?という事です。
僕は現在の日本商品の多くが、台湾での展示会やテスト販売による一時的な売り方に終止し、支援会社が売った後までをプラニングできている気がしません。
僕らも同じです。新規顧客が来た後、どのようにしてリピートに繋げるかもっともっと考える必要があります。applemintlab だってそうです。僕もまだまだ三流経営者です。
結局の所、僕らの場合で言うと結果を出すことがリピートにつながる最善の策なのですが、結果を短期的に出せない場合、どのような付加価値を提供すれば継続して僕らとお仕事が出来るか考える必要はあります。
最後は少しそれましたが、以上が台湾での日本商品の販売の仕方が変わってきているというお話でした!