大円安時代の台湾での戦い方

みなさんこんにちは、applemint 代表の佐藤 (@slamdunk772) です。

1台湾ドルが、ついに5円になりましたね…🤨

日本に住んでいる人の多くは、台湾ドルと日本円の関係なんてあまり気にしていないと思うので、今回の変化もあまり実感がないかもしれません。

というか、僕の母にこの事を話したら「あら、そう?」みたいな反応でした。

でも、年間500万人もの台湾人が日本に旅行していることを考えると、台湾人にとって1台湾ドル = 5円は超重要です。

マジで。

この円安によって彼らの消費や思考が変わることは目に見えています。

僕が今から12-3年前に台湾の大学院を決心出来たのは、紛れもなく為替のおかげです。

当時は 1台湾ドル=2.8円とかで、その当時参加した台湾留学セミナーでは講師の方が「今がチャンスです!」と熱く語ってました。

いやーついつい乗せられましたよ😆

それから約10年も経たないうちに、日本円は台湾ドルに対して実質「半分の価値」になったみたいなもんです。

では、この円安のインパクトって、実際どれくらい大きいのか?
今日はそのあたりを、僕の経験も交えてブログでお話ししたいと思います。

事業が当たるタイミングは誰にもつかめないことを理解する

為替の変動によって売れるものと売れなくなるものは確実に存在します。

でも為替がどうなるかわかる人はいないんで、結局我慢強くある程度の期間様子をみないといけません。

これは我慢が好きな日本人の得意技だと思っています。

今日本のアニメが強いのはまさしく我慢し続けた結果なわけです。

残念なことに我慢できる会社はどんどん少なくなっています。

あ、お金に余裕がないような企業は我慢しなくていいと思うのですが、多くの日系企業 (特に上場企業)は内部留保がとんでもなくあるのに我慢できないケースが多いです…

そんな中僕らのクライアントに、余裕はないけど我慢をした面白いクライアントがいます。

アニメ x 伝統工芸品 を販売しているクライアントで、アニメの IP を活用しながら、日本の伝統工芸品を越境で台湾で販売しています。

僕のブログでも何度か出ています。

この企業さんと僕らがお仕事を始めたのは今から7年前の2018年で、その当時はマジでびっくりするぐらい売れませんでした(すいません🙇)

アニメキャラクターをモチーフにしたお財布が40,000円とかするので、その当時のレートで大体10,000台湾ドルとかでしたからね…

しかもアニメライセンスを管理する会社の制限で、広告 (バナー) は許可されたものを何年も使い回しです。

今流行りのショート動画とか無理です。

唯一変更が可能なのがデジタル広告のターゲットだけです。
これを過去7年間ずっとやってきて、最初の3-4年はずっと不調が続きました。

10,000台湾ドルの商品を1個販売するのに、20,000台湾ドルの広告予算を投下するなんてザラにありました。

それが今は円安の影響も合ってか、単価と同じぐらいか単価よりも低い広告予算で購入されるようになりました。

僕らは何もしてないって言ったら語弊がありますが、ターゲット調整以外は、ほとんど設定を変更できないので、これこそまさに外部要因が購入に影響した代表的な事例と言えると思います。

何もしないで売れなくなる商品

一方で円安で売れなくなる商品ももちろん存在します。

日本のコスメは2025年7月現在、KOL や有名人のモデルを起用してよっぽどの付加価値をつけないと、台湾では本当に難しいと思います。

みんな日本で買いまくってますし、代理で購入してくれるサービスやメルカリみたいなサービスもありますからね。

会社が正規品を普通に台湾に輸入していたら、とんでもない値段になって、何をやっても売るのが難しかったりします。

しかも大円安時代です。

某日系コスメ企業の化粧品は1,000NTD なのですが、台湾に進出した6-7年前は円換算で3,500円だったのが、現在は5,000円です…

この商品の日本の価格は、2,900円なので、なんだか日本の方が2倍ぐらい安く見えます。

家電もなんだかよくわからないことが起きています。

象印の炎舞炊きは日本だと、僕が確認した限りだと16万円ぐらいでかなり高級な炊飯器の部類に入ります。

2025年7月10日アクセス:www.zojirushi-direct.com

多分これ以上の価格アップはターゲットが本当に限定されるので、この16万円は結構攻めている方だと思います。
16万円は、現在の為替レートで台湾ドルに換算すると、大体3万台湾ドルです。

一方で、台湾の象印のサイトに行くと、炎舞炊きは42,990台湾ドルです。

2025年7月10日アクセス:https://www.zojirushi.com.tw/

42,990台湾ドルを円換算すると21万円です。
日本で購入したものは、台湾のと電圧が少し違いますし、台湾ではメンテナンスの対象外になるもの、1万台湾ドル or 5万円の差はあまりにでかいと思います。

僕が台湾人ならマジで台湾で買う気が失せます。

後ほど話しますが、こんな状況で、台湾で”購入”を目的としたプロモーションは、例えるなら潮の流れに逆らって船を動かすようなものです。

台湾国内観光業の不振とその必然

台湾への外国人観光客は、2019年の約80%の水準まで回復しており、少しずつ観光客が戻ってきているようです(意外😅)

日本では夏休みを国内で過ごす人が大半を占めていますが、台湾では多くの人が海外旅行を予定しており、その消費も国外で行われています。

前瞻観光政策研究室の統計によると、2024年の国内旅行支出は4646億元で、2023年の4954億元から308億元減少しています。
一方、海外旅行支出は約1兆191億元となり、2023年の7134億元から3057億元の増加(42%増)となっています。パンデミック前と比べても24%増加してます。

こうした海外旅行の主な渡航先は、日本、韓国、タイといった近隣諸国と見られています。

この話題になると、台湾の人たちからよく聞くのが次のような声です。
「台湾のホテルはコスパが悪い」
「台湾のホテルはなぜあんなに高いのかわからない」
「国内旅行の費用が日本旅行と変わらない」
などなど

台湾に住んでいる人なら、「わかるー」って感じです😁

実際、台湾のホテルは、タイや日本のホテルと比べると、設備面やサービス面で見劣りするケースが多く、それを指摘する声も少なくありません。

ここで言いたいのは、台湾の国内旅行におけるホテルや観光地の“競合”は、国内の他の地域ではなく、日本や韓国、タイなど周辺国のホテルや観光地だということです。

観光の話になると、「グローバルな競争」を理解できるのに、いざビジネスになるとそれを忘れてしまう人は多いです。

一部求職者の根拠なき高給

少し前置きが長くなりましたが、最近、30代前半の方と面接をすると、広告代理店やデジタルマーケティングの経験者の場合、月給60,000NTDを希望されるケースが非常に多くなってきました。

どうやらこの「60,000NTD」が一つの目安のようです🤩

ちなみに、現在の為替レートで換算すると、60,000NTDはおよそ30万円です💦💦

つまり、30歳前後で転職を3〜4回経験し、それぞれの会社での勤務年数が最長でも3年程度の求職者が、月収30万円を求めているってことです…

僕は個人的に、「中々ないなー」と思ってしまいます🤨

もし、自分に日本人に仕事を依頼できる選択肢があるなら、そっちを検討します。

円安の影響で売れなくなっているのは、何も商品やサービスだけではありません。
台湾人の場合、自分自身の“労働”にもそれが当てはまるという事実に、まだ気づいていない人は多い気がします。

そしてこれは、applemint にも言えることです。
僕らには、台湾にいるからこそ分かることや、台湾にいるからこその強みもありますが、円安が続けば価格面で相対的に割高になってしまう可能性もあります。

だからこそ、僕らは嫌でも「日本ぐらいの基準」あるいは「グローバルスタンダード」を目指さなければいけないんです。

…にもかかわらず、ここ最近の applemint では、ちょっとした細かいミスが続いていて、僕としてもかなり頭を抱えています(まぁ全部僕の責任なんですけどね…😅)

ということで、今回はこの「歴史的な円安」が与える影響について書いてみました。

最後に、日本の皆さんはぜひ、ドル円レートだけじゃなく、韓国ウォンや台湾ドル、人民元などとの為替レートも見ておいた方がいいな、と個人的に思っています👍