中間ブランドの苦戦と海外進出時の発想の大転換

みなさんこんにちは、applemint 代表の佐藤 (@slamdunk772) です。

今日は「中間層の苦戦」というテーマでお話ししたいと思います。ここでいう「中間層」とは、いわゆる中流階級のことではなく、価格帯が中間に位置する“中間ブランド”を指します。

中間ブランドとは、価格がちょうど高級ブランドと低価格ブランドの間にあるようなブランドのことです。たとえば、ユニクロのダウンジャケットが1万円、ノースフェイスのものが5万円だとすると、その中間の3万円くらいの価格帯にあるブランドが「中間ブランド」となります。

近年、どうやら台湾でも日本でも中間ブランドが非常に苦戦しているようです。そして、日本の企業が台湾に進出すると、さまざまなコストが上乗せされ、結果的に「中間ブランド」の価格帯になってしまうことが多いのです。

今日のブログでは、「それならいっそのこと、中間ブランドではなく“ハイブランド”を目指した方がいいのでは?」という視点で、お話ししてみたいと思います。

どんどん苦しくなる中間ブランド

インターネットの普及により、情報はオープンになり、商品やサービスの品質も均一化されつつあります。

「えっ?なんで?」と思った方のために少し説明します。

たとえば、インターネットが普及したことで、これまで門外不出だったようなミシュラン一つ星レストランのレシピが公開され、理論上は誰でもその味を再現できるようになりました。

また、ネットの浸透によって、人々は何かを購入する際、これまで以上にオンライン情報に依存するようになっています。

今の消費者は、ネット上に情報がないブランドには手を出しませんし、レビュー評価が低いブランドにも手を出そうとしません。

このように情報がオープンになった結果、消費者の行動はむしろ保守的になっているというのは、とても興味深い現象です。

では、消費者の行動が保守的になるとどうなるか。

答えは明確で、有名ブランドはさらにブランド力を強め、新興ブランドはブランド構築により多くのリソースを投じなければならない状況になります。

しかも、新興ブランドが価格で有名ブランドより有利に立てることは、ほぼありません。
むしろ、多くの場合やや高めの価格設定で勝負せざるを得ないのです。

なぜなら、有名ブランドは豊富な資本を活かして大量発注によるコストダウンが可能ですが、新興ブランドは小ロット生産のため、コストを下げることが難しいからです。

以上をまとめると、現在の中間ブランドの苦境は次のように表現できるのではないでしょうか:

  1. ネットが普及
  2. ネットが普及しどのブランドの質も均一化
  3. 情報がオープンになると消費者はますます情報に頼る
  4. 保守的な行動/購買につながる(情報のないブランドを更に避ける)
  5. 有名ブランドは資本を使って、低コスト/いい品質実現

台湾で中間ブランドになる日本企業

中間ブランドが苦戦しているのは本当に多岐に渡っていて、顕著なのがアパレルやコスメだと思います。

アパレルに関しては、消費者は聞いた事のないちょっと高い中間ブランドを買うぐらいなら、ユニクロや GU を買う人がほとんどな気がします。

この傾向は日本だけでなく、台湾も同じだと思っています。

leo

ただしユニクロは台湾の人からすると少し高めのブランド

その結果、台湾においても、低コストで高品質を実現しているユニクロは、比較的堅実にビジネスを展開できている状況です。

また、台湾国内に数百店舗を展開する LOUISA COFFEE(ルイーザコーヒー)も、低価格帯のカフェチェーンとしてその勢いを保ち続けています

leo

一部の人はLOUISA COFFEE のコーヒーをディスってますが…

ひとつ例外として挙げられるのが、ONE BOYという台湾発のアパレルブランドです。

このブランドは価格帯だけ見ると典型的な中間ブランドに位置しますが、莫大な広告宣伝費を投入し、短期間で一気にブランド認知を獲得しました。

結果として、中間ブランドでありながらも非常に短期間で「知っている人が多いブランド」に成長したのです。
ただし、これまでに投入した広告費をきちんと回収できているかどうかは不明です……。

ONE BOY の事例を見ると、「これだけの広告宣伝費をかければ、中間ブランドでも十分やっていけるのでは?」と思いたくなります。
しかし、現実にはそこまでの広告費を投入できる中間ブランドはほとんど存在しません

そのため、結局のところ多くの中間ブランドは台湾市場で苦戦しているのが実情です。

こうした背景を理解しているのかいないのかは分かりませんが、台湾に進出する日系企業――特に中小企業の多くは「中間ブランド」として進出してくる傾向があります。

日本の商品に関税や輸送コストが加わると、どうしても価格帯が中間レベルになってしまい、結果として中途半端な立ち位置になりがちです。

そして、そのまま台湾で価格競争にもブランド競争にも勝てずに苦戦するケースが後を絶ちません。

僕自身は、そうなるくらいなら、いっそのこと中間ブランドとしてではなく、海外用に自社ブランドを再構築し、まったく別の戦略で挑戦してみるのもアリではないかと考えています。

海外で日本と同じ事をする必要はない

では、日系の中小企業はどうすればいいのでしょうか?
僕はやはり、海外向けにリブランディングを行うべきだと思っています。

これは完全に僕の主観ですが、アメリカで展開している一風堂は日本とは全く異なるブランドとして展開しているように見えます(中の人間じゃないのでなんとも言えませんが…)

ネットで「アメリカ 一風堂」と検索してみると分かるのですが、アメリカにおける一風堂はなんだか “おしゃれなレストラン”としてポジショニングされています。
照明や内装、スタッフの接客スタイルまで含めて、日本のカジュアルなラーメン屋とはまったく異なる雰囲気です。

なんでもアメリカでは一風堂が“デートスポット”として使われることもあるとか…
(ちなみに台湾でも、一風堂はちょっといい外食としてカップルが訪れることが多いです。)

このように、「そのままの形で海外進出する」のではなく、その土地に合わせてブランドを再構築するという姿勢が、中小企業にとって重要なのではないかと僕は感じています。

leo

日本で気になる女の子を一風堂に誘ったら2回目はなさそうですよね..苦笑

ラーメン一杯の値段も強気です。彼らはアメリカ市場で日本とは全く異なる一風堂ブランドで戦っています。

あと、アメリカの一風堂はユニフォームも割とかっこいいです。

一風堂は、アメリカ市場において恐らく、日本よりは “ハイブランド”として戦う戦略を取ったと思います。
僕はまさにこの戦略こそが、一風堂が
アメリカで10年以上ビジネスを続けられている理由の一つだと思っています(色んな苦労や思い通りに進んでいないことは多々あると思いますが…)

ラーメンという本来リーズナブルなカテゴリであっても、あえて高単価で勝負し、それに見合う内装やユニフォームを整備することで、中間ブランドにならずに済んだことは非常に大きかったと思います。

ここでひとつ強調したいのは、「日本で庶民的なブランドだったら、海外でも同じく庶民的な価格帯で勝負しなければならない」わけではないということです。

これは、いわば“固定概念”です。

もちろん、台湾のように日本との心理的・物理的距離が近い市場では、日本と大きく異なるブランド戦略を取ることはややリスクがあるかもしれません。

昨今円安ですし、同じものを提供しているのにあまりに価格差があれば敬遠されるでしょう。

しかし、アメリカや東南アジアのように文化的背景が異なる地域では、思い切ってブランドの立ち位置を再設計することがむしろ成功の鍵になると僕は考えています。

もし今の時代が、中間ブランドにとって厳しい環境なのであれば、
いっそのこと「ハイブランド」として“生まれ変わる”という戦略を取ってみてもいいのではないでしょうか。

そして、海外で構築したハイブランドを日本へ“逆輸入”するという動きもまた、非常に面白いと思います。
(例:トヨタの「レクサス」、ホンダの「アキュラ」、日産の「インフィニティ」などがまさにそれです)