【台湾国立政治大学の文武両道作戦】脅威のスポーツブランディング

こんにちは!台湾でデジタルマーケティングの会社 applemint の代表を務める佐藤(@slamdunk772) です!

今日は僕の大学院の母校でもある政治大学についてお話をします。最近、国立政治大学の変貌っぷりが凄いことになっています。

このブログを書こうと思ったきっかけは、先日7年ぶりに大学院時代の教授とランチをし、その時に政治大学の文武両道計画の話を聞いて感心したからです。

詳しくは後ほどお話をしますが、政治大学は現在バスケットボールチームがめちゃくちゃ強くて、スポーツ関連の施設や図書館、そして学生寮などがどんどん充実しています。

その裏には、政治大学を文武両道にしたいという卒業生の思いと、大胆な行動がありました。今後台湾の大学への進学を希望する人や、大学を運営する人、または企業にお勤めの方も参考になると思います。

ちなみに、僕は政治大学からお金をもらってこの記事を書いている訳ではないのでご安心ください😂

というか僕は過去に政治大学の MBA に対して、やや批判的なメッセージを書いているので、台湾の大学院を考えている方はそちらも併せてご覧ください。

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始まりはNCAA のバスケを経験した卒業生からの寄付

みなさん、NCAA のバスケットボールのトーナメントってご存知ですか?全米のバスケットボール大会の事なんですけれども、アメリカではものすごく人気で、日本で有名な八村塁選手も過去に出場しています。

そんな NCAA のバスケットボールはいくつかのディビジョンに別れていて、特に一部ディビジョンの王者を決めるトーナメントはものすごく盛り上がります。興味深いのが、成績が良い大学はよく一部ディビジョンに所属している事です。

例えば、バスケットボール及び学業で有名な Duke は一部ディビジョンの常連です。Dukeは高校時代の成績がアホみたいに良くないと入れません(経験者は語るw)

leo

アメリカの高校時代に、DukeはオールAじゃないと入れないと聞きました😭

なぜアメリカの NCAA の話をしているかと言うと、今から数年前に当時政治大学の学長だった周行一氏及び、卒業生数名が集まった際、彼らはNCAA の熱狂を政治大学で再現したいと考えたためです。

彼らの多くは、 NCAA 一部ディビジョンに所属するアメリカの名門校を卒業していて、政治大学のブランディングにバスケットボールの力を利用したいと考えていました。

leo

ちなみに周行一氏は元々MBA でケーススタディの教授をしていて、少しでも集中していない生徒がいたら追い出す鬼教授でした(笑)クラスはよかったです。

この考えに賛同した政治大学の卒業生の一人である姜豐年氏は、その後4年間で4000万台湾ドルを政治大学に寄付する事にします。

その後、これまた政治大学の卒業生で、大潤發などのコングロマリットを率いる尹衍樑氏も3億台湾ドルを寄付して、政治大学の体育館が改修されました。

体育館は2017年に改修が終わり、大学なのに、2000人の観客が入るプロが使うスタジアムのような体育館が出来上がりました。

政治大学はその他にも、潤沢な寄付金を使い、一流のコーチを招聘し、その結果、台湾でバスケットボールで有名な高校の一流の選手のリクルートに成功します。その結果、政治大学のバスケチームは 2021年に見事台湾の全国大会で優勝しました。

参考:政大為何要大費周章拿下籃球冠軍?

政治大学 or 体育大学?

今回の話を通して、卒業生の方々の政治大学への愛情と寄付金は確かに凄いのですが、それよりもすごいのは、台湾で「バスケットボール」に着目し、バスケを使ったプロモーション効果を狙った事です。

台湾では通常、大学でバスケを高いレベルで続ける場合、体育大学か一部の私立大学に入る学生が多いです。

大学卒業後にプロになれる選手はほんの一握りで、残りの人は就職します。ただ、台湾では大学で高いレベルでスポーツをしていた事が就職に有利に働くかと言うと、そういう訳ではないのが現状だったりします。

それよりも台湾では結局、大学名や大学時代の成績が重視される傾向にあります。それに加えて、前述したバスケが強い体育大学や、私立大学は台湾でトップ校という訳ではなく、プロになれないと厳しい就職争いが待ち受けています。

一方の政治大学はどうかと言うと、台湾ではトップ校の一つで、学歴社会の台湾でトップ校が就職しやすい事は言うまでもありません。

そうすると、高校時代にバスケで優秀な成績をおさめた選手は、政治大学かその他のバスケ強豪校に行くチャンスがあった場合、万が一プロになれなかった時の事を考えて政治大学を選ぶ確率が高くなるでしょう。

日本では早稲田大学や慶應大学といった学業でも有名な大学がスポーツに投資して、駅伝やラグビーなどを通して効果的に宣伝をしています。

台湾では、日本のように学業で有名な大学がスポーツ投資をしてきておらず、今回の政治大学のバスケを通じたブランディングは、まさにその盲点をついた素晴らしい戦略だと思います。

しかも政治大学のバスケの選手は一定の成績をおさめる事が求められており、これは就職で役に立つでしょう。その結果、プロになれなかった選手も無事就職を果たし、若いバスケ選手はより政治大学を選ぶ確率が高くなります。

また、バスケに目をつけたのも素晴らしいと思います。バスケットボールは台湾では野球と並ぶ人気スポーツで、プロリーグも存在します。そのため、2000人のスタジアムを作っても十分入場者を集められます。

実際に2021年の全国大会の決勝は台北アリーナで開催されていますし、大学のバスケの試合は度々テレビで放送されています。テレビ出演や露出が増えると、今度は広告収入が見込めます。

ホームページを見たら、DAIKIN がユニフォームのスポンサーになっていました。

参考:https://gogriffins.com.tw/uniform/

経験と大きな投資

政治大学の戦術は、台湾の名門校がスポーツに参入していない盲点をついた素晴らしいものです。今後彼らはバスケに限らず、野球やバドミントンや卓球なども強化するかもしれません。

ただしこの戦術も2つの事がなければ実現しなかったでしょう:

  1. 卒業生がアメリカの大学で NCAA トーナメントを体験した事
  2. 大きな投資とスピード感

政治大学がバスケに力を入れると決めてから、寄付の決定と実行までのスピードが半端ない訳ですが、その理由は政治大学の当時の学長や多くの卒業生が、アメリカの大学のスポーツの熱狂ぶりを経験していたからだと思います。

あの熱狂ぶりはアメリカ現地にいないとわからないでしょう。僕もアメリカにいた時はよく地元ロサンゼルスの USC や UCLA の試合を見てました。もしも僕がこの二つの大学のどちらかに通っていたら、試合の度にとんでもなく興奮したでしょう。

この興奮や熱狂はその場にいた人しかわかりません。結局僕らがやる事は通常僕らの体験を超えないので、卒業生がアメリカ留学をしていなければ、やれ「バスケ投資した時の集客シミュレーションを出せ!」、「いつまでに投資を回収できるのか?」、「黒字の見込みは?」とかばかり話して、いつまで経ってもスタートしなかったかもしれません。

leo

まるで海外に進出する日系企業のようです…苦笑

僕は台湾に進出する会社で、大胆な投資を行わずに、スモールスタートでうまくいったら大きな投資をするというスタンスの企業をいくつも見てきましたが、大抵失敗しています🙃

今回の寄付金の集め方と投資のスピードは異常で、この裏には卒業生の熱狂とアメリカでの一次体験を台湾で実現させたい強い思いがあったと思います。

勝算を見出した上でのスピーディーな資金集めと大胆な投資に色々な学びを得た applemint 代表佐藤でした!

それでは今度は有料記事でお会いしましょう!(笑)