applemint 代表佐藤の月間インプット (2021年10月後編) 信長のブランディングとマーケティング戦略
こんにちは、applemint 代表の佐藤 (@slamdunk772) です。10月後半になってようやく30度の日がなくなった台北からこのブログをお届けしています。
今回のインプットのブログでは織田信長についてお話をしたいと思います。今ちょうど織田信長の本を読んでいて、マーケター/経営の視点から彼がいかに優れた人物だったかご紹介します。織田信長のブランディングと彼のマーケティング戦略は現代に通じるエッセンスもあるのでぜひご覧ください!
また、このブログの最後には織田信長の戦略を基に台湾にいる会社は何をすればいいのかお話をしたいと思います!
それでは今回もどうぞ!
織田信長の戦略とマーケティング
みなさん織田信長と聞くとどんなイメージがありますか?残忍?裏切られて殺された?色々あると思いますが、今日お話ししたいのは彼のマーケティング戦略です。一応参考図書を下に書いておきます。
参考:『信長の原理』
まずマーケティングの前に彼の事を少し話します。上記の参考図書によれば織田信長は残忍に見えて実はとても公平で、能力があると認めた人は感情に振り回されないで登用していたようです。また能力がある人間もそうでない人間も誤ちを犯せば罰し、いい働きをすれば昇進させてました。
秀吉のように身分が低い者も働きに応じて出世した辺りに彼の公平さが見えますね。
ここからが本題です。彼は桶狭間の戦いで今川義元を破った後、自分の名前が広がらない事に不満を抱いていました。厳密には「織田信長は強い」と世間に思われていない事が気に入りませんでした。
一方武田信玄や上杉謙信は世間から無敵のように思われていて、織田信長は自分と彼らの間でなぜこのイメージの差が生まれるのか考えました。彼とて今川義元の2万5千人の軍を打ち破っています。考えた結果、彼がたどり着いた答えは「武田信玄や上杉謙信は何度も戦に勝っているから」でした。
つまり、武田信玄や上杉謙信は継続して戦に勝っているから彼らは強いと思われているのです。また、武田信玄や上杉謙信は織田信長より戦の量が多い事を信長は悟りました。
戦をするのは簡単ではありません。戦には膨大な費用がかかります。これはつまり武田信玄や上杉謙信は戦を何回もするだけの財源を確保していたという事です。
その後信長はよく調べると武田信玄は金の鉱脈を自分達の財源とし、上杉謙信は青苧 (あおそ)という当時高級な衣類や紙などの原料を上杉家の専売品として扱い財源を確保している事がわかりました。
残念ながら織田信長の領土である尾張には金の鉱脈はありません。青苧も取れません。では信長はどうしたか?彼はよく考えた結果、尾張には日本随一の平野が広がり、温暖な気候で肥沃である事に気付きました。要するに農業がしやすくて住みやすいということです。そこで彼は、「人」を増やして財源を確保しようと考えました。
次に彼は人を増やすために関所を撤廃し楽市を立て、商業を盛んにして治安を徹底して管理しようと考えました。
- 関所とは
今でいう関税 + 番所。領土の境に設けて、領土に怪しい奴が入って来ないかどうか調べていた。同時に領土に入る時に通行税を取っていた。
- 楽市 (aka楽市楽座)
税金をなくして一部の既得権益者が持っていた特権をなくして誰でも商売できるようにした政策
結果はどうなったか?
この結果、信長の予想通り尾張には富が集まりました。何のリソースもないと思っていた尾張に富が集まったのです。
ここまで読んで織田信長がどんな視点ですごかったかマーケターの視点で考えます。
- 「イメージ」(ブランド)を気にした事
- 事象→仮説 (ロジカルな分析をした上で仮説を立てた)→Next Action という思考
- 自分のリソース (自分の強みと弱み) をきちんと理解した上で戦術を取った事
まず彼は「自分の強さが世間にあまり広がっていない」という事を調べ事実を受け入れました。彼は度々自分の家来に指示して自分の強さを調査させて、自分の客観的な評価を随時把握していました。
さて、ここで唐突な質問をします。台湾に進出した会社さんの中に自分達のブランドのイメージはどうか度々調査している会社はどれだけいるでしょうか?苦笑
また、彼は自分の強さが認知されていない事実を受け入れた上でそれがなぜ起きているのか仮説を立てて調査をして戦術を実行しました。例えば今回ご紹介した例だと彼は以下のフローで「尾張に人を集めて商業を活性化させる」という具体的な戦術に移りました。
- 自分は武田信玄や上杉謙信に比べて「強い」というイメージがない (事実)
- その理由は「戦の数」と「彼らが継続的に勝っているから」ではないか? (仮説)
- 戦で継続的に勝つにはそもそも戦をするための財源がいる。やつらには財源があるのでは? (仮説)
- やつらには財源の源がある。これが強さの秘密だ。つまり財源確保が戦で勝つ鍵だ。(調査&仮説)
- やつらは自分達の地の利点を生かして財源を確保している。自分達には何がある? (自己分析)
- 尾張には何もないが「いい土地」があって住みやすい。人を増やして富を増やすぞ!(Next Action)
- 具体的には商売をしやすくして、治安を管理して住みやすい場所にする!(戦術)
如何ですか?見事じゃないですか?
NEXT ACTION:まずは自分達の現在地を理解する
この信長のやり方を参考にすると、まずブランドがやらなくてはいけないのは自分達のブランドの現在地を理解する事です。自分達のブランドは台湾でどう思われているのか?どのくらい知られているのか?を知る必要があります。
ただしその前に自分達はどう思われたいか考える必要があります。
次に、自分達のイメージを競合のイメージと比較して仮説を立てる必要があります。なぜ競合は〇〇なイメージがあって、自分達にはそのイメージがないのか?考えます。
仮説を立てたら次に調査を行います。調査を行なった後、競合とのギャップを埋めるために自分達には何が出来るか自分達のリソースや強み/弱みを理解します。強みを生かして、弱みを消す施策が大事です。これらを行なってようやく具体的な施策に移ります。
ちなみにブランドのイメージやブランドの認知は毎年変わるのでこの一連の作業は定期的にやるといいでしょう。
いかがでしょうか?信長が現代で生きていても割と立派な経営者/マーケターになっていたと思います。台湾進出をお手伝いしている人や台湾に進出した人はこのブログを見て、次にやることのヒントになったのではないでしょうか?
以上 applemint 代表佐藤から信長のマーケティングと戦略についてでした!今後もお楽しみください!