台湾起業7年目でわかった、台湾でうまくいく日系企業と台湾企業がそこから学べること
みなさんこんにちは、applemint 代表の佐藤 (@slamdunk772) です。
今日は先日、換日線で書いたコラムの日本語版をみなさんにお届けしたいと思います!
僕は2024年から台湾7年目を迎えるにあたって、先日今までの顧客のデータを振り返りました。その際に、残念な事に顧客データの中には、すでに撤退した企業や、台湾で苦戦している企業が大多数を占めていた事に気づきました。台湾に進出して、経営的に成功しているのは実はほんの一握りだったりします。
調べて行くと、台湾でうまくいっている企業と、そうでない企業にはある共通点があることがわかりました。
今日はそんなお話をした上で、今後台湾市場/日本市場への進出を足がかりに、グローバルにビジネスを展開したい企業のヒントになるようなお話ができればと思います!
ローカライズのコストとローカライズをあえてしない重要さ
Sony 創業者の盛田昭夫氏は、 Sony を世界に広めた人として有名です。彼の有名な考えに、『グローバル・ローカライゼーション』という言葉があります。
今でこそ当たり前ですが、彼はアメリカオフィス設立の1960年から、マネージメントの現地化及び、販売・サービス、生産の現地化を始めました。
人生の半分以上を海外で過ごしている僕も、このグローバル・ローカリゼーションという考えが大好きですし、信仰者でもあります。しかしグローバルに展開しながら、その地域に合わせる事は多大なコストとなります。
そのためローカリゼーションはとても重要と考えながらも、今では、進出した先でそもそもローカライズが必要かどうかを考えるのが重要と考えています。
この観点で言うと、台湾はローカライズをするには、少々コストパフォーマンスが悪いと僕は考えています。
台湾は人口2300万人の市場で、近年は人口減少の傾向が見られます。将来人口が爆発的に増える兆候は現時点でありません。そんな市場に多大なコストをかけてローカライズした場合、利益が出るのはどんなに早くとも5年後ぐらいだと思います。
つまり、ローカライズの重要性は認識しつつ、最近僕が思うのは、台湾成功の鍵に限って言うと、如何にローカライズをしなくても売れるかだと思っています。
例えば日本の文房具や玩具、アパレルはあまり台湾にローカライズされていません。日本のスペックやサイズをそのまま持ってきています。
Microsoft の Office 365 やアップルの製品も、繁体字の言語オプションはあっても、台湾人だけのための性能や機能を積極的に追加しているかと言うと、僕が知る限りはしてないと思います。
また、価格もローカルに合わせないのは結構重要だと思っていて、前述した日本の文房具や玩具、アパレル、デバイス製品の価格は全世界ほぼ同じです(現在円安のせいで、むしろ日本製品は日本国内の方がかなり安くなってますが、以前は日本と同等か少し高いくらいでした)。
これらの事から何が言えるかと言うと、今後台湾のみならず海外でうまくいく商品やサービスは、グローバルスタンダードでほぼローカライズの必要性がないものがまず挙げられます。
一方でみんながみんな、そんなに高い品質の商品やサービスを作れるわけではないですし、みんなが高い品質のものを求めているわけではありません。
従って、グローバルに展開し、ローカライズのコストをかけて、商品やサービスをローカルのニーズに合わせる戦略も引き続き有効だと思います。ただしそれを台湾で行う場合には、利益を出すためにそれなりの長期的な覚悟が必要でしょう。
なので、台湾進出のお問合せを頂いた時に、直感的にうまくいくと思うのは、台湾でローカライズしないでいい商品やサービスです。これは機能のみならず、価格もそうです。
このグローバルスタンダードなお話を基に、次に台湾企業や日系企業がどうすれば、海外市場にもっと進出していけるかというお話をしたいと思います。
SASUKE のグローバル成功とコンテンツ
「グローバルスタンダード」と聞くと、なんだかとても質の高いサービスを作らないといけないと思うと思います。
しかし、日本にはアイデアでグローバルスタンダードと認められたコンテンツがあります。
日本では、毎年年末のこの時期に SASUKE というテレビ番組が放送されます。
知らない方のためにこの番組を簡単に説明すると、SASUKE は難易度が高い障害物競争です。
SASUKE では、場外に作られた大規模な障害物に色んな挑戦者が挑み、その様子が放送されます。挑戦者の中には、漁師や電気屋の店長など普段テレビでは見かけないような素人の方が多数います。
このSASUKE が始まったのは1997年で、その当時はスポーツエンターティメントの番組の1コーナーでしかありませんでした。
それが現在では、『SASUKE / Ninja Warrior』という名で、なんと世界160カ国で放送され、20カ国以上で現地版の SASUKE ステージが制作されています。
アメリカでは、大手テレビ局の NBC がアメリカ版の SASUKE を制作し、なんと過去にエミー賞にもノミネートされました。
では、SASUKE を考えた TBS が当時豊富な予算があったかと言うと、今のテレビ番組の予算規模と比べると少なかったと思います。
12月12日に放送された、TBS のTHE TIME という朝番組の紹介では、SASUKE はその当時流行っていた、マリオのゲームを参考に、挑戦者が左から右に流れるように放送したそうです。
また、2006年にアメリカで放送が開始された当初、日本で録音した動画をそのまま放送したため、当時の人はヒットしないと思っていたそうです。そしたらまさかの大ヒットで、現在の SASUKE の地位を築くきっかけになりました。
グローバルスタンダードとは、通常グローバルに通じる超高品質なサービスを指しますが、グローバルに通じる共通言語を探すことが出来れば、アイデアでもグローバルに展開できる事例をご紹介しました。
僕が思う日本進出可能な台湾の商品やサービス
SASUKE の他に近年では、K-POP も韓国語で歌っているのに、世界中で支持されています。
願わくば、台湾からもそんなコンテンツ、或いは商品やサービスが日本にどんどん進出してくれたら、と思っています。では、どんな商品がいいか?
台湾の野球は可能性があるでしょう。野球は言葉が通じなくてもグローバルに戦えますし、何より台湾の野球は U-12や、U-18などユース世代の世界大会は日本よりも成績がよく、グローバルに通じるポテンシャルがあります。
しかし現時点で、台湾野球のプロリーグは ”ファンの数”という観点では日本の野球や MLB に負けています。
これはタダのアイデアですが、例えば今の時代に合わせて、台湾の野球も独自のルールを作ったら面白いと思っています。例えばNBA のルールは世界バスケの基準と異なります。
近年アメリカでは野球離れが指摘されており、その理由は試合時間の長さです。そのため、2023年のシーズンからは、投手が球を投げる時間に制限がかけられました。正攻法ではありませんが、イニングを減らして、毎度満塁からスタートするような野球も面白いかもしれません。
では、台湾の商品やサービスはどうでしょうか?僕は密かに ”黑金剛花生” はいいなーと思っています。日本人もアメリカ人も落花生を食べますし、ローカライズする必要はありません。それでいてユニークで、インパクトがあるので、僕はお土産によく黑金剛花生を買います。
そのほか、ソフトウェアやデバイスに関して言うと、残念ながら日本はローカライズしないで通じるほど甘くないと思っています。
Facebook や Google のようにグローバルで勝てるサービスを一から作るのは至難の業ですし、現時点でグローバルスタンダードな商品を出せている台湾企業は、一部のパソコンメーカーや、トレンドマイクロなどのソフトウェアメーカー、及び半導体です(他にもありますよ!)。
ただし、日本市場は幸いにも人口がまだ多く、人手不足とは言え台湾に比べたら労働者も多いので、コストをかけてローカライズする価値はあります。
その際、もしもローカライズをするなら、東京ではなく、地方のニーズに合わせるといいと思っています。
例えば先日山口県と台南市が交流協定を結びましたが、こうしたきっかけを理由に台南の会社が山口の市場に進出するのはいいと思います。
という事で、以上 applemint 代表佐藤からでした!2024年もアクティブに、グローバルに頑張りたいと思います!